コラム
赤いボールペンで大きく斜線が引かれた遺言書(自筆で書かれたもの)が有効かどうか争われた裁判について、昨年11月に最高裁の判決が出ました。
その内容は「赤いボールペンで文面全体に斜線を引く行為は、一般的には遺言の全効力を失わせる意思の表れとみるべきだ」と指摘し「故意に遺言を破棄したといえ、効力はない」と結論付けました。
1、2審では「元の文字が判読できる程度の斜線では効力は失われない」と判断されていた結果が翻ったことになります。
民法には『遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については遺言書を撤回したものとみなす』という規定があります。
今まで、この「破棄」とは、遺言書を破いたり燃やす等の行為や、黒く塗りつぶして文面の一部を読めないようにすることであると考えられていましたが、今回の判決で、新たな考えが提示されたことになります。ただ、今回は斜線を引いたのは遺言者本人であることが前提となっていたようですので、案件によっては結論は変わってくるのかもしれません。
本件の遺言書が発見されたのは2002年、そして「無効」の結論が出たのが2015年とここまで約13年間かかりました。また今後は遺言書はなかったものとして遺産分割方法の話し合いが必要になってくることから、最終的に財産が分配されるには更に期間がかかりそうですね。
自分の死後に争いが起こらないことを願って作成したはずの遺言書で、このような争いが生じてしまうということは本当に残念です。
こういった事例からも遺言書を作成する場合は「公正証書遺言」が安心だなと感じました。