コラム
法律上「生前に親の事業を手伝ったり親を看病したりしたことで親の財産の維持・増加に貢献した場合、その分財産を多く受け取ることができる。」という考え方があり、これを『寄与分』といいます。
例えば、姉A・弟B(母は既に死亡)がおり、Aが年老いた父の介護を長年同居し担っていた場合、遺産分割の話し合いの場で、Bの理解が得られればAが介護で貢献した分大目に財産を受け取ることは可能です。
ただ、もし、Bがその貢献を認めず、Aは認めて欲しいと主張し話し合いがこじれた場合、家庭裁判所の判断を仰ぐことになります。では、家庭裁判所はどの程度、「介護の貢献度」を認めてくれるのでしょうか?
実は、この点について裁判所の基準は介護した側にとっては大変厳しいものとなっています。民法は親子・兄弟姉妹等は助け合って暮らすよう義務付けており、この義務の範囲を超えて初めて『寄与分』として認められるのです。つまり、親族に通常期待される程度の助け合いは『寄与分』と認めてもらえません。
『寄与分』の判定基準は明文化されておらず、実務上は「要介護2以上の人を少なくとも1年間自宅で自ら介護した」という目安があります。
『寄与分』が認められた場合の金額の算定基準は、介護に関しては公的介護保険で定められたサービスの報酬額ですが(例:20分未満のオムツ交換で事業者が得るのは1,710円この額の70%程度)、最大でも遺産全体の2割といわれています。
また、上記の算定方法の全額が認められるわけではなく、仮にAが父名義の家に無償で同居し介護していた場合は、貢献分から家賃相当額を差し引いて考えらえます。
このように、親と同居しての在宅介護は、心身ともに大変負担が大きいにも関わらず相続に関しては、満足のいくほど貢献度合いを認めてはもらえません。
ですので、もし、介護の貢献度を考慮して欲しい場合には、親に判断能力がある内に遺言書を書いてもらうのが一番確実な方法になります。また、それだけでなく、普段から介護の大変さを他の相続人に理解してもらうよう意思疎通しておくことも、話し合いをより円満に進める為に重要です。