コラム
脳腫瘍で余命宣告を受けていた29歳の米国人女性が、インターネットで『尊厳死』を選ぶと宣言し、今年11月1日に医師から処方された薬を服用し死亡しました。この方法は、日本では『尊厳死』ではなく『安楽死』に当たるとされ認められていません。
では、『尊厳死』と『安楽死』はどのように異なるのでしょうか?
『尊厳死』とは「病気が不治かつ末期になったとき、自分の意思で、死にゆく過程を引き延ばすためだけの延命措置を断わって自然死を選び尊厳を保ちながら死を迎える」ことです。
これに対して『安楽死』は「病気等の苦痛から解放するために本人の意思により、医師など第三者が薬物などを使って患者の死期を積極的に早める」ことです。日本では、この様に、終末期の患者に致死量の薬を処方し死期を早めた場合は、自殺ほう助罪や殺人罪に問われる可能性もあります。
『安楽死』とは区別されている『尊厳死』ですが、現在、日本では『尊厳死』に関して法律が整備されていません。その為、本人が尊厳死を希望していたことを家族から説明されただけでは、実際にどう対応するか医師は判断に迷います。家族の意向を受けて延命治療を中止したことにより上記の様に、「殺人罪」に問われる可能性も否定できないため、医療現場では患者らが尊厳死を望んでもやむなく延命措置を続ける傾向が強いとされています。
尊厳死に対する強い意思を表示し希望に沿った医療を受けるためには、文書として自分の意思を明確に残しておくことが大切です。日本尊厳死協会が発行している「尊厳死宣言書」や、公証役場で「尊厳死宣言公正証書」を作成することも一つの方法です。
「尊厳死宣言書」や「尊厳死宣言公正証書」が存在すれば、医療現場では必ずその意思に従わなければならないと確定されているわけではありませんが、日本尊厳死協会のアンケート結果によると、同協会が登録している「尊厳死の宣言書」を医師に示したことによる尊厳死許容率は、平成15年は95.9%、平成16年は95.8%に及んでいます。
尊厳死を希望しているものの、上記のような「宣言書」を正式に作成する気持ちにはなかなかなれないという方は、まずはエンディングノートに自分の希望を書き込んでいくことから始められてはいかがでしょうか。