コラム
「うちはそれほど財産がないから、相続争いなんて関係がない。」「遺言書が必要なのはお金持ちの人だけでしょう?」といったご意見をよくお聞きします。中には「大した財産がないのに、遺言書を書くのはなんだか大げさで恥ずかしい。」と思われている方もいらっしゃいます。では、実際にはどうなのでしょうか?
司法統計によりますと、今年の1~9月に家庭裁判所での調停が成立する等で落ち着いた遺産分割事件は約6,200件でした。その内、遺産額が5,000万円以下の事案が約4,700件。つまり、全体の75%が遺産額5,000万円以下の争いということになります。更に詳しく見ると、遺産が1,000万円以下の事例は上記の期間で約2,000件あったそうです。
こういった、相続争いが増えた理由の一つとしては、テレビや新聞等で相続に関する情報が広がり、相続人側がそれぞれ権利意識を持つようになったことが挙げられます。
これに対して、相続する側には、昔ながらの家督相続の考えが当然と思っておられる方も多く、そういった方は「長男が自宅を相続することにまさか誰も文句は言わないだろう」といった気持で何の対策もとっておられません。
一般的に財産が多いほど相続争いが起こると思われがちですが、不動産だけでなく預貯金等も十分にお持ちであれば「不動産を相続できない人には預貯金を多く相続させる」等の方法で相続人の全てに偏りなく財産を分けることも可能であるため、相続争いを避けることが可能です。
これに対し、一番相続争いが多いのは「財産は自宅と預貯金が少し」といったケースです。相続人の一人に自宅を相続させ、他の相続人には自宅評価と同額の預貯金を分けてあげるということができず、かといって、自宅を相続人全員に等分に共有させれば、後の世代で権利関係が複雑になり問題が生じる可能性が高くなります。
事前にとれる対策はご家族の事情によりケースバイケースですが、遺言書の作成や家族で集まった際に、親の想い、子供の想いを伝えあい方針を共有することが大変有効です。