コラム
相続税の節税対策として、「教育資金」、「結婚・子育て資金」、「住宅取得資金」の子や孫への非課税贈与等、様々な制度が設けられ利用する方も増えています。
そんな中、贈与のし過ぎで老後の蓄えが不足し「老後破綻」へ繋がるといった懸念も発生しています。
『一般的に3000万円程度老後資金があれば大丈夫』とよく耳にします。総務省の調査によると、夫が65歳以上、妻が60歳以上のリタイア世帯の家計は月平均6万1560円の赤字で、貯金を年約73万円取り崩しており、仮に65歳の夫が90歳になるまでの25年間で計算すると赤字は1850万円程度になります。確かに、3000万円の蓄えがあれば赤字分は賄うことができますが、この試算はあくまでリタイア世帯の平均によるものです。
持ち家に住んでいるのか賃貸住宅に住んでいるのか、住宅ローンは完済しているのか、将来施設入居も視野に入れているのか、何歳でどの程度の介護が必要になるのか、介護が必要になってからどれだけ長生きするのか等など、個人個人の事情によって必要額は大きく異なってきます。
「持ち家でローンも完済しているし、死ぬまで自宅で暮らすつもりだから大きな金額が必要になることはないだろう」と安心している場合も、家屋の老朽化による補修が必要になったり、車いす生活になり家全体のバリアフリー化工事が必要になる等、まとまった支出が必要になる可能性もあります。また、24時間体制で介護が必要になった場合、身近に頼れる親族がいなければ、持ち家があっても施設入居の必要性がでてきます。施設入居した場合は、入居一時金や月々の施設利用料が新たに発生してきます。
こういった様々な可能性を考慮して、十分な余裕のある老後資金を確保した上で、子や孫への一括生前贈与を検討することが大切です。無理に多額の贈与をしてもらうより、親が自立し余裕を持って快適に暮らしてくれることが子供の一番に望みではないかと思います。